スイス人が教えてくれた「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になれる生き方

はじめに

日本人より、ずっと豊かなスイス人

あなたは、スイスという国にどんなイメージを持っていますか?

  • アルプスの山々に囲まれ美しい自然がある。
  • チョコレートやチーズが美味しい。
  • ちょっと手がでないけど、あこがれの高級腕時計の産地。
  • WHOや国連のヨーロッパ本部がある。
  • 小さいけれど、永世中立国を守り続けている。

 すぐに浮かんでくるのは、そんなところでしょうか。

 日本人にとって、スイスはあまり馴染みのない国ですが、なんとなく優雅でお金持ち、豊かな暮らしを送っているというイメージが浮かんできます。あるいは有名なアニメ「アルプスの少女ハイジ」を見て、ヤギとともに山に登り、牧畜で暮らす素朴な日々を想像する人もいるかもしれませんね。では、実際のスイスはどんな国なのでしょうか

日本人とスイス人は意外とよく似ている

 実は日本人とスイス人はとても似ているところがあります。 スイス人は真面目で忍耐強く、 仕事は正確で緻密です。あの緻密なスイス時計の生まれる国なのですから当然ですね。仕事の現場を見ていても、フランス人などのラテン系は気分で仕事をするところがありますが、どちらかというと日本人のようにコツコツと仕上げ、何かイヤなことがあっても、ぐっと我慢をして、最後はきっちり仕上げる国民性です。  街の中を歩いていても、日本と似ているところがあります。まず道路がとてもきれいで、ゴミが落ちていません。近頃、東京の町中にはゴミ箱がなくなってしまいましたが、スイスにはちゃんと一定間隔にゴミ箱が置いてあります。それらはきちんと管理され、定期的に掃除も行われているので、ゴミ箱からゴミがあふれだすということもありません。
 また意外にもスイス人は恥ずかしがり屋なところがあります。
 ある地域の集会に出席したときのことでした。それまでの私の勝手な想像で、欧米人はみなプレゼンテーションが上手で、挨拶なども気の利いたことをサッと言うような人たちばかりと思っていました。ところが、前に出て話をするスイス人が「口べた」で、挨拶も切れ味がなく、会の運営もてきぱきとは言いがたいものがありました。まじめでシャイな人たちの集まり。そう、まさに日本人とよく似ているのです。日本は島国ですが、スイスもヨーロッパ大陸の中の「島」によくたとえられます。

スイス人は日本人より、2.5倍もお金持ち

  ところが日本人とスイス人では大きな違いがあります。
 それぞれ仕事熱心な国民性なので、豊かになって当然なのですが、どうみてもスイス人のほうが日本人より、はるかに豊かな生活をしています。
 2015年の1人あたりのGDP(国内総生産)を見ると、スイスは世界第2位の8万675ドル。日本は世界第20位の3万2485ドル(※)。実に2.5倍もスイス人はお金持ちなのです。2016年はスイスフランがやや安くなり、円が高くなっているので、その差は少し縮まりましたがそれでも依然として大きな差があることには変わりありません。
 そのうえ、スイス人は驚くほど働く時間が短いのです。  遅くまで残業するのが当たり前のようになっている日本人に対して、スイス人は夕方5時にはサッと仕事を切り上げます。15分程度の短い通勤時間で自宅に帰り、家族でゆっくりと夕食を楽しむのが、ごく普通の暮らし方なのです。
 また長期休暇が1年に少なくとも5回以上もあります。クリスマス休暇が終わったら、次はスキー休み、そしてイースターの休暇という調子で、「バカンスとバカンスの間に仕事をしている」と言われるくらいです。
 日本人はスイス人と同じように、いえ、それ以上にコツコツと働いているはずなのに、なぜスイス人だけがこんなに豊かなのでしょうか。
 その最初のヒントは「時間」の力の活かし方にあるのだと思うのです。

時間がたつと価値が上がる「ヴィンテージ」な暮らし方

そもそも私がそのことに気づいたのは、1998年暮れにスイス・ジュネーブ市に赴任して生活を始めたのがきっかけでした。
 最初の気づきは、中古マンションを探しているときでした。日本では買った時からどんどん価値が下がっていき、30年も経過すると二束三文になるはずのマンションが、新築マンションよりはるかに高価なのです。信じられますか? そこではじめて「時間が経過すると価値が上がる」=「ヴィンテージ」になるという世界があることを、身をもって知ったのです。
しかし、時間が経つとすべての価値が上がるとは限りません。スイスには日本でも有名なスウェーデン家具のI社の本部もあり、創業者もスイスを代表する資産家ですが、同社の家具は時間が経つと「がらくた」になってしまいます。
時間が経つと価値が上がる「ヴィンテージ」になり得るのは「ホンモノ」だけ。「ニセモノ」は時間が経つと価値がなくなり「がらくた」になってしまいます。つまり、時間を活かして価値を上げるには、最初から「ホンモノ」である必要があります。

ホンモノになるために必要なのが「自立」

 そこで大事なのが「ホンモノ」を見極める目です。その力を伸ばすためにも、まず自分自身が「ホンモノ」にならなければなりません。私はそのために不可欠なのが「自立」だと思っています。この「自立」こそが豊かなスイス人を作り上げた、もう一つの重要なキーワードであり、日本人との最大の違いもここにあるのです。
 このことについて最初に気づいたのは、スイスの健康保険を利用したときでした。
 子どもが風邪をひいて医者に行った時の請求書をみて愕然とします。なんと150フラン(約1万8000円)! 毎月、高い健康保険料を払っているにもかかわらず、スイスではある金額に到達するまでは、医療費が全額自己負担なのです。この時ばかりは日本の医療保険制度を羨ましく思いました。
 しかし、その後、しばらくして考え方が変わってきます。
 負担が大きいので出来るだけ風邪をひかないよう、あるいは虫歯にならないよう常に意識している自分たちに気がつきます。結局、スイスにいる間、子どもを除いて医者のお世話になることなく、健康に過ごすことができました。無駄な医療費も節約できた事になります。
 このようにスイスでは社会全体が無駄なく、賢く運営されています。 日本とスイスのイラスト スイス人一人ひとりが「自分の国は自分たちで運営する」という意識がとても強く、個人的には「不便だな」と感じることも、社会全体の損得で考えて、無駄な贅沢はしないという発想です。さらに年に何度か重要な法案についての国民投票があり、社会をどうしていくかについて、誰かのせいにするのでなく、自分たちでしっかりと考えて行動しています。
 日本ではなにか問題があれば「政府が悪い!」と思う癖があります。自分達で解決しようとする前に、まず行政に解決してもらう事を期待しているのです。「それが当たり前」と思っていた私にとって、スイスはまさに異次元の価値観を持つ国でした。
 ある意味「今さえよければ」「自分さえよければ」といった日本人の生き方の積み重ねが、1000兆円を超える日本の国の借金になったとも言えるでしょう。
 そのうち日本人がケージのなかのハツカネズミに見えてきました。回し車のなかで一生懸命走っているアレです。すごくまじめに頑張っているのに、いつまでたっても気づいたらもとの場所のまま。問題は自分で解決しようとせずに、人任せや先送り。そのうち自分も古くなって(歳を取って)、「がらくた」になって粗大ごみよろしくお払い箱になりかねません。モノの価値だけでなく、自分自身の問題でもあるのです。
そういう私も50代後半という、いい年齢になってきました。自分の人生の残りを考えると「時間」を味方にする生き方を、そして「自立」した生き方をより追求したい。そして自分自身も「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になりたい。
 そして読者の方々にもお約束します。長期の時の流れを意識し、「自立」した生き方を志すことで人生の選択肢が変わり、きっと未来が輝き出すはずです。
お金や資産の豊かさはもちろん、人生における本当の豊かさを目指して、「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になる知恵を、スイス人の生き方から探っていきましょう。

多根幹雄

※ IMF- World Economic Outlook Datebase(2015年10月版)参照

スイス人が教えてくれた「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になれる生き方

スイス人が教えてくれた「がらくた」ではなく「ヴィンテージ」になれる生き方

多根幹雄 著

スイスを拠点に活躍した著者が、人生の本当の豊かさが手に入る 「ガラクタ」ではなく「ヴィンテージ」になれる生き方を提案。

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